【仏青通信】人間の価値

先日、ある門徒さんのお父さんの三回忌法要を勤めた後、ご家族と食事をいただいていた時のお話です。

お父さんが元気な時は、認知症になったお母さんの介護で大変だったけれど、お父さんは料理が得意で、同居する家族にスパゲティや唐揚げ、鶏ガラから作るスープに手作りチャーシューの本格ラーメン(あのラーメンは美味しかった!と皆懐かしむ)など手の込んだ食事をよく作ってくれたそうです。

晩年は、お母さんは外で迷子になった事をきっかけに施設に入所し、後にお父さんも足を悪くした事で入院、その後施設に入所する事となりました。

一度ご夫婦揃って一時帰宅し、家族の皆さんで食事をしました。

食事を終えて施設へ帰る頃、息子さんは頭の片隅でこう思ったそうです。

家におりたい、施設に帰りたくないと父は言うのではないか…。

しかしお父さんの口からは、そんな言葉ではなく、施設に着いてから、

「やっぱりここがええわ〜」

と言ったそうです。

また、息子さんの奥さんのお話では、お義父さんは重い荷物を運ぶ仕事だったので大変だったやろなと思っていたけれど、自身は、

「仕事楽しかった。また同じ仕事をしたい。」

と話していたそうです。

息子さんは立派な父やったと思うと同時に、お前も老いたり病気になったりした時は、こういう態度をとれと教えてくれたような気がしますとお話しくださいました。

人間には三つの価値があると言われています。

一つ目は創造価値。何かを新しく創り出すところに価値がある。

二つ目は体験価値。長い人生で得られた経験に価値がある。

三つ目に態度価値。どのような境遇にあっても、与えられたこの場所で精一杯生き切る態度に価値がある。

物を創ることや、新しく何かを経験することができない境遇にあっても、周りを朗らかにしてくれる言葉や、与えられたこの場所で精一杯生き切るお父さんの態度に、人間の価値を感じました。

第9組 光明寺 直井了純